「崖の上のポニョ」

崖の上のポニョ [DVD]

映画「崖の上のポニョ」公式サイト

妻がジブリ・ファンなんで。

「手書きの絵にこだわった」ってのはなかなか成功して、ダイナミックですよ。
冒頭のたくさんのクラゲが海中に浮かぶようす。
「ファインディング・ニモ」で似たようなシーンがあるわけだけど、「ニモ」のCG では近くのものも遠くのものもリアルにクラゲの造型なわけですよ。
本作、「ポニョ」では、手前はしっかり「クラゲ」でも、中景から遠景はほぼ丸い形が描いてあるだけ。
大雑把っていえばそれまでなんだけど、逆に雪が降るような感じの想像を刺激する。

また、光の帯みたいな表現も、CG 的には「光っている一つひとつの粒子はなんなんだ?」といったアプローチになると思うが、「ポニョ」では「光の帯は光の帯だよ」といった感じに画面を黄色い固まりが覆う。
最近、テレビCMでやっている、海の波を巨大魚に例えるなど、リアルであることよりも、頭の中のイメージをそのままに描こうというのは逆に斬新な印象だ。

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「父と暮らせば」

最近、「夕凪の街 桜の国」を検索キーワードにこちらのブログに来てくださる方が多いのです。
こんなちっぽけなブログですら関心をもってもらえるのですから、映画のパワーを感じます。

そこで「夕凪の街 桜の国」をご覧になった方、この「父と暮らせば」もお勧めです。
「夕凪の街 桜の国」について書いたときにもキーワードにした、「生き残ってしまったという自虐」について自分が最初に考えさせられた映画といえます。

こちらはおもに登場人物が3人。
井上ひさしさんの原作どおりの戯曲調で、映画的には物足りない感じがしないでもないですが、その分、核心に迫って考えさせられる仕上がりになっていますよ。

「夕凪の街 桜の国」

映画『夕凪の街 桜の国』OFFICIAL SITE

この映画を見てはっきりと自覚した。
以前にも少し書いたことだが、ぼくが悲劇の映画やドラマを見て泣けるかどうかは、その悲劇をけっしてくりかえしてはいけない、という作り手の思いの強さに比例するのではないかと思う。
無論、「作り手の思い」などというのは数値化できないので、そのあたりの厳密さを追及されると困るのだが。
少なくとも、悲劇をくりかえさないことに真剣になれば、その悲劇がなぜ起こったのかを真剣に探求するはずだ。

いうまでもなく、この映画における悲劇の元凶は、ヒロシマに投下された原爆だ。
同名の原作漫画同様、けっして声高に反戦・反核をさけぶ映画ではない。
しかし、声高でないことと、真剣でないこととはまったく別物なのだ。
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「ブラッド・ダイヤモンド」

映画『ブラッド・ダイヤモンド』オフィシャルサイト
「BLOOD DIAMOND」オフィシャルサイト

あー、紹介が遅くなってトホホですが。
いい映画です。
この間紹介してきた、「ナイロビの蜂」「ホテル・ルワンダ」に通じるアフリカものです。

この映画の特筆すべき点は、アフリカの人たち自身を主人公としてあつかっていること。
レオナルド・ディカプリオ演じるアフリカ生まれの白人・ダニー、そしてジェニファー・コネリー演じる生粋の欧米人・マディーと対比する形で、それを見事に表現している。
最後のシーンの国際舞台で、アフリカ人自らが語り、マディーら欧米人がそれを見上げるという撮り方をしているのはあまりお目にかかったことがない。
ダイヤモンドをアフリカ人の手に戻すという暗喩もいい。

その点が、「ナイロビの蜂」では弱かったなぁと、いまにして思えば。
「かわいそうなアフリカの人たちは、援助・救済の対象。自立なんて考えられない or 自立するための援助」といった80年代の「USA for Africa」的限界をはらんでいたように思う。
もちろん「ホテル・ルワンダ」は、主人公が現地・ルワンダの人たちなのでいうまでもなく「アフリカの人たちが主人公」なわけだが、あえて今作のように強調することに意味があったように思う。

さて、このシエラレオーネでのダイヤモンドの問題、最近ぼくに気づかせてくれたのは、カニエ・ウエストの「Diamonds From Sierra Leone」
映画で、「めでたし、めでたし」というわけじゃないのですよ。

「日本の青空」

 「日本の青空」公式ホームページ

これまた大事な映画です。
安倍首相は、任期中の改憲を公約にその地位に着き、いま先頭に立って、改憲手続き法案…要するに憲法をかえるための準備をすすめている。
なぜ改憲が必要か――安倍首相の説明は「戦後、GHQがつくった憲法だから」というものだが、この映画がテーマにしているのは、そのGHQ はまさに日本人がつくった原文をもとにして憲法をつくったという点だ。

戦争中、治安維持法で投獄され、獄中で憲法学を学んだという鈴木安蔵さん(高橋和也さんが学究肌で情熱的というキャラクターを好演)が中心となってつくった憲法私案について GHQ が事細かに研究し、字句をふくめその成果を生かしたという資料が残っていたことから、いまの日本の憲法は、GHQ = アメリカがゼロからつくって押しつけたものではなく、その大事な部分は日本人自身がつくったんだということをあきらかにする。

憲法9条だけでなく、国民主権、基本的人権など、あらゆる面で、日本人自身が努力し、明治時代の自由民権の思想や運動もひきついでつくられたのがいまの日本の憲法だというのは大いに感動に値する。

それを、田丸麻紀さん演じる出版社の派遣社員が発掘するというエピソードにからめて現代に引き込んでくるというのも月並みながら成功している。

そもそも安倍首相をはじめとした改憲勢力が、「だれがつくったか」ということだけで改憲を突破しようとしているのは、憲法の内容にはケチがつけられないから…と、いろいろ思うところはあるけれど、とりあえず見てほしい映画です。

また、憲法のことを知りたい、知ってほしいという多くの個人や団体がスポンサーになって製作されたという点でも、特筆すべき映画です。
まだ募集しているようなので、「映画のスポンサーになれるチャンス」かも(ぼく自身も検討しています)。

「ディパーテッド」

映画「ディパーテッド」公式サイト

先の第79回アカデミー賞で、作品賞、監督賞ほか今回最多の4部門で賞をとった、というので観にいった。
レオナルド・ディカプリオが演じるビリー・コスティガンはギャングとなって潜入捜査する警官、マット・デイモンが演じるコリン・サリバンは警官の中でもエリートに乗っかっているが実はギャングの手下という複雑な設定。
途中までは、このハラハラ感がどこに着地するのかとワクワクしていた。

が…

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「夏物語」

発売元 : 東宝
品番 : TDV17183D / 価格 : 4,935円(消費税235円ふくむ)

『夏物語』公式サイト

予告編が単なる恋愛映画でない時代観がありそうなので、見に行ってみた。
60年代末を舞台に、イ・ビョンホンは当時の学生、ユン・ソギョンと、現在(60歳過ぎって感じかな)を1人で演じる。
ソギョンが農村で出会って恋に落ちるのが、スエ演じるジョンイン。
ぼくは韓国の歴史にそれほど詳しいわけではないが、当時の軍事独裁の時代の中で、それとたたかった学生たちの大きな流れの1人としてユン・ソギョンが描かれる。

ソギョンは実業家で権力者の父をもつ一方、スエの父親は北朝鮮へ行った「アカ」。
映画の素朴な印象としては、時代に引き裂かれたロミオとジュリエット的恋愛映画、というものだが…。
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実話だったらおもしろい?

先日、「ドリームガールズ」について書いた後、オフィシャル・ホームページをながめていた。
ぼくは

ビヨンセが演じた主役・ディーナのモデルはダイアナ・ロスらしいとかのゴシップとか、そんなことどうでもいい気がする。
…具体的な「誰か」なら、そこにはかならず終わりがある。
…抽象的な人物で描くからこそ、そこに夢をたくすことができる、「楽しい」映画になってるんだと思う。

と書いたのだが、製作会社・配給会社の方はそう思ってないらしい。
オフィシャル・ホームページの「作品情報」→「プロダクションノート」あたりを読んでいると、実在の人物やレコード会社を描いたんですよーというのを売りにしたいらしい。

で、最近の映画の傾向で感じていたことにピーンと来たわけですよ。
つまり「実話ブーム」。

ここ最近、実話、もしくは実話にもとづくという点を押し出してる映画がけっこうあって、しかもそれなりにヒットしている。
2006年度興収10億円以上」の作品のなかだけでも、「男たちの大和/YAMATO」、「子ぎつねヘレン」、「フラガール」、「バルトの楽園」、「ワールド・トレード・センター」、「父親たちの星条旗」などの実話をもとにしたもの、また一応史実をふまえているというふれこみの「ダ・ヴィンチ・コード」、実在する病気をもとにした「タイヨウのうた」など、準ずるような作品もある。
現在公開中の作品にいたっては、「幸せのちから」、「マリー・アントワネット」、「硫黄島からの手紙」、「あなたを忘れない」などそうした作品が大集合してしまった状況だ。
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「ドリームガールズ」

「ドリームガールズ」オフィシャルサイト

試写会に誘われていってきました。
いやー、最近見た2本の映画と対極。
とにかく楽くて最高!!
オリジナルがブロードウエーミュージカルって知らなかったから、こんだけ楽しい楽曲がガンガンくるとは思わなかった。
はっきりいって、椅子に腰掛けて見て(聴いて)るのはストレス。
映画館じゃなくて、もともと椅子なしのデカいライヴハウスなんかで上映やったら、けっこううけると思うぞ。

ストーリーは別にどうってことないし、ビヨンセが演じた主役・ディーナのモデルはダイアナ・ロスらしいとかのゴシップとか、そんなことどうでもいい気がする。
テレビやメディアを利用してヒットチャートをひた走る路線、虐げられた人たちのドロドロとした思いを表現してときどきマグマの噴火のような単発ヒットを生み出すドロ臭い路線、そのもとでのアーティストの葛藤…などなど、特定のアーティストということではなく60年代から80年代にかけてのアメリカのブラック・ミュージックを象徴した年表みたいなもんじゃないかな。

だからこそ楽しい。

具体的な「誰か」なら、そこにはかならず終わりがある。
この作品が描いた時代からさらに20年もたっているんだから。
抽象的な人物で描くからこそ、そこに夢をたくすことができる、「楽しい」映画になってるんだと思う。

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「それでもボクはやってない」

周防正行監督最新作『それでもボクはやってない』公式サイト

2日おいて、またしても「大事な映画」。
爽快感とか、感動とかいった感情よりも、人間の理性によびかけるタイプの映画だ。

とにかくリアル。
同じ周防監督の「Shall We ダンス?」や、「シコふんじゃった」などを先駆けとして、最近元気な日本映画に共通しているのは、「ひたむきさ」だと思う。
その世界にずっぽりはまって俳優たちなんかもまきこんじゃって、生身で表現する感じ。
これはもうリアルの前提として必要な姿勢だと思う。
先日紹介した「フラガール」もそう、「ウォーター・ボーイズ」もそう、ラストの決定的なところにむかって、俳優が役と一体になって練習し、挫折し、それでも精一杯とりくむ過程までもが映画の一部、みたいな。
ハリウッドだったら「ドル箱」俳優の「顔が見えないところはスタントの仕事でしょ?」の一言で終わっちゃいそうな…。

今作においても、少なくとも周防監督自身は相当数の裁判を傍聴し、本を読み、関係者の話を聞いてつくりあげたんだろうなぁ…というその没入感やリアリズム、そういったものが自然にかもし出す恐怖や屈辱、笑いや希望にあふれている。
それをあえて「演出してやろう」という感じでなくやっているところに新しさがある。

そして、この映画、痴漢冤罪事件をテーマにしてはいるけれど、やはり日本の司法制度全体を告発した社会派映画だ。
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