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「フォーン・ブース」

フォーン・ブース [DVD]

映画には、いわゆる大作と小品がある。
大作といえば、製作費や大物俳優の出演などという基準が一般的だけど、もう一つ見終わった後の印象として「大作だったなぁ」と思わせる基準として、主人公の時間的・空間的移動量というのがあると思う。
地球上のあちらこちらをかけめぐる「007」シリーズや、宇宙をかけめぐる「STAR WARS」なんか空間的な移動量で「大作感」を感じさせる典型だろう。
だとしたら、この「フォーン・ブース」は、まず主人公が徒歩で(だいたい数百メートルばかり)移動するシーンからはじまって、映画のほとんどの時間、たった1つの電話ボックスのなか、もしくは受話器につながるコードの範囲内ですごすというとんでもない小品だ。
この制約がなんともおもしろいじゃないか。


主人公のスチュは、劇中の言葉を借りれば「パブリシスト」。
要は、ウソだろうがホントだろうが、雑誌が買ってくれそうな情報を右から左へ移動してギャラをいただいて生計を立てる。
映画の冒頭は彼の仕事ぶりを紹介する。
めまぐるしいスピードでくりひろげられる電話でのせりふのやりとり。
そのスピード感を、画面へのカットイン(高機能テレビについてくる副画面みたいな状態だ)や、画面を4つに分割して同時に進行する情景をおさえるなど、映像的にも斬新だ。

今回、予告編の「におい」だけ、まったくの事前情報なしでこの映画を見たわけだが、設定、台詞回し、映像などからは、「新進気鋭の映画監督の作品」という印象をうけた。

しかし、後で調べてみると、監督のジョエル・シューマカーは、1942年生まれの現在61歳!! 日本のテレビドラマでパクられたこともある「セント・エルモス・ファイアー」やジュリア・ロバーツ主演の「愛の選択」、「バットマン」シリーズなどなど、すでに円熟ともいえるキャリアを積んだ監督だった。
いずれの作品とも今作「フォーン・ブース」ほど、奇をてらったというか、遊び心あふれるというか、そういう「はみ出した」印象を受けたものはない。
むしろ、そういう監督がこういう作品をつくるチャレンジ精神が気持ちいい。

しかし、映像や設定の斬新さとは裏腹に、着地地点は人間が良心とむきあうことを迫るヒューマンな作品となっているようだ。
ラストシーンとの関係で全部を語るのは公開直後のこの時点ではさしひかえよう。

その斬新さと、ある種の古典性・普遍性のバランスで評価が分かれそうだ。
ぼく自身の感想は、設定の斬新さとシナリオの安定感で十分バランスがとれるはずで、映像の斬新さは蛇足だったのではないかなあ…と思うけど。
でも、十分おすすめです。

「フォーン・ブース」公式サイト

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