「蟹工船」

by

in
蟹工船 [DVD]
蟹工船 (2009) 【監督】
【出演】松田龍平 / 西島秀俊 / 高良健吾 / 新井浩文 / 柄本時生 / 竹財輝之助 / 利重剛 / 滝藤賢一 / 山本浩司 / 中村靖日 / 谷村美月 / 菅田俊 / 大杉漣 / 木下隆行 / 木本武宏 / 三浦誠己 / 清水優 / 高谷基史 / 手塚とおる / 皆川猿時 / 矢島健一 / 宮本大誠 / 野間口徹 / 貴山侑哉 / 東方力丸 / 奥貫薫 / 滝沢涼子 / 内田春菊 / でんでん / 森本レオ


★★★☆ [70点]「煮え切らないのはいただけない。カニだけに」 
若手中心、こぎれいな衣装のポスターを見て「若者むけ流行追っかけ映画」と感じたのだが。
やはり小林多喜二の原作と比べれば、その世界が、あまりにこざっぱり、ゆったりとしてしまっている印象は否めない。
とくに原作の嗅覚にうったえてくる感じがまったくなく、無臭の印象をうけるのが大きな違いだろう。
このあたりが減点の理由の一つ。
ただ、原作もの・時代ものとしてはどうかと思うが、現実の労働現場の過酷さは現場でさまざま。
「映画のなかの労働に比べればいまの職場はだいぶましだ」という印象をつよくするよりは、結果として現実にかなっているようにも思える。モノクローム、セピア調の労働現場に対して青空で夢や希望を象徴化したり、団結のシンボルもよくできていて、肝心なところの視覚的効果をぼく的には高く評価している。
また、主人公が労働者たちを説得する、「資本家がいくら道具をもっていても、労働者の働きがなければ一銭にもならない」というセリフは原作においても決定的な理論。
資本家側の「ヤツらは労働組合を知らない。バラバラの労働者はこわくない」というセリフも時宜にあっている。
しかし、映画全体は「個々人が考え方をかえるのが大事」という無難な主張の印象が強く、「団結して変革する」ことに製作者たちが自信を持ちきれていないように感じる。
結果、映画全体と原作のもつ熱さと、「そうはいってもなぁ」という冷ややかさとが混在した煮え切らない印象につながっているのではないか。
この点も減点の理由。
ただし、この問題は製作者たちだけの責任とはいえない。
現実において労働組合が資本に勝利する事例がまだまだ目立たないからだ。
「たたかって勝利する」がもっともっとひろがって、後にこの映画をみただれもが「ぬるいなぁ」と思ってしまうような時代が訪れることを期待したい。

 

Posted by Dai on 2010/08/02 with ぴあ映画生活