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「出口のない海」

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「チルソクの夏」、「カーテンコール」と、自分のピントにぴったりだった佐々部清監督作品ということで楽しみに出かけた。

多量の爆薬を積み、人間が操縦して敵艦船に体当たりするという人間魚雷、回天。
戦争に行く意味、敵を殺す意味、自分の死の意味…それを考えつづけた学徒兵たちの葛藤が全体を覆う。
回天を敵艦船のそばまで運ぶ潜水艦と、人一人がやっと座れる回天内部が映画の主要な場面となり、精神的にも肉体的にも「出口のない」状況を描く。
生きて帰ることになっても、「(お国のために)死ねなかった」という残酷な後悔をひきずるという出口のなさ…。
靖国史観派の人たちは、戦争を反省することを自虐というが、戦争ゆえに引き起こされたこの「生きていることへの自虐」をどう説明するのか。

主人公たち個人の葛藤が問題なのではない。
戦争というシステムが彼らをそこに追いこんだというメッセージが大事だ。

激しい応戦があるわけではないし、血が出るとか、手足がふっ飛ぶとかいう視覚的・肉体的な苦痛もないので、戦争映画としては淡々としているかもしれない。
しかし、ずっしりと心にのしかかる映画だ。
翌日、妙に腹筋や太ももが筋肉痛で、きっと映画館の座席でふんばってしまっていたのだろう。

市川海老蔵さんが演じた主役の並木浩二は、甲子園にも出場した大学野球のピッチャー。
戦争が切り裂いた若者の夢として野球を選んだのは「出来すぎ」と思うかもしれない。
しかし、実際にそんな青年がいたのだ。

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「サマータイムマシン・ブルース」

サマータイムマシン・ブルース スタンダード・エディション (初回生産限定価格) [DVD]

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ひさびさに「いい感じ」の日本映画。
「SFなんて読んだことないSF研究会」の部室に突然あらわれたタイムマシン。
ちょいとエアコンのリモコンをとりに昨日へいってみるか――っていう軽さがいい。
出演の、瑛太さん、上野樹里さんなんかの、日常的なハイテンションぶりが実に絶妙だし。
タイムマシンってのも永遠の夢だけど、そもそも昨日やきょうって短い日常がドラマになるのが青春。
このドタバタ感が最高!!

高校・大学時代、ぼんやり充実とした日々を、心のどこかでは終わることのないものと信じていた、たしかに。
ある意味、それは、きょうから昨日へとえんえんとタイムマシンに乗りつづけていたような感覚だったといえなくもない。

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「スウィングガールズ」

スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]

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「女子高校生がジャズ!?」というのがそれだけでコピーになるのかどうか…。
というのも、ぼくの高校時代一時期の思い出にはジャズが流れているから。

進学校では高校3年の夏休みは、夏「休み」ではない。
学校に行くかわりに予備校に行くだけ。
そして、学校以上にギスギスした雰囲気のなかで、ぎっしりの「予備校イス」で隣のヤツとひじとひじをぶつけ、受験戦争の火花を散らす――。
…というのは、じつはぼくにとっては空想の世界で。
ぼくはといえば、ほぼ毎日学校のプールに通い、プールの閉まる午後3時からは学校近くの市立図書館の冷房の効いたソファーで惰眠をむさぼり、起きたらちょっと勉強し、帰りに図書館のレコードを借りて帰る――というのが日課だった。
図書館のレコード――ちょうどその時期はレコードから CD への変わり目だったが――は、容赦なくいろんな人が借りるので、当時のヒット曲のものは、傷がひどくてとても聞けるものではなかった。
結果として、いちばんレコードがきれいだったジャンルがジャズだった。

高校生とジャズの出会いなど、所詮そんなものかもしれない。
しかしいざ出会ってしまうと、時代のヒット曲以上につよいインパクトで、高校生を夢中にさせ、とりこにするエネルギー、魔力をもっているのもジャズなのだ。